離婚調停を申し立てる際、多くの方が悩むのが「事情説明書」です。
※裁判所ウェブサイト – 夫婦関係調整調停(離婚)の申立
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html

申立書は形式に沿って記入すれば完成しますが、
事情説明書の中の「夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由」欄は自由記載です。

そのため、「とりあえず思っていることを書けばいい」と考えてしまいがちです。

しかし実務では、
書き方ひとつで調停の印象が大きく変わります。

この記事では、実際によくある失敗例をもとに、
「どこが問題だったのか」「どう書けばよかったのか」を解説します。

あわせて、
なぜ夫婦不和に至ったのか
申し立てをしようと思ったきっかけ
相手が主張してきそうなこと

といった、実務上重要なポイントについても整理します。

失敗例① 感情だけを書いてしまう

実際の記載例
「相手は本当に最低な人間で、毎日イライラさせられてきました。もう顔も見たくありません。」

何が問題か?
⇒具体的な事実がない
⇒第三者に伝わらない
⇒単なる感情のはきだしになっている

上の画像まではいかずとも、
とてもつらく苦しい思いをされている方も中にはいらっしゃいます。
しかし、このような書き方で提出してしまうと、不利になる可能性があります。
不安な場合は、提出前に一度内容を確認しておくことをおすすめします。

事情説明書は、事実を伝えるための書類です。

そして、これからあげる失敗例にも共通することなのですが、
この事情説明書を読むのは、
担当する調停委員や裁判官といった、調停に関わる人たち
です。

これらの人たちに、いかにこちら側の事情を事前に把握してもらえるかが、
調停をスムーズに進めていくコツでもあるかと思います。


改善例
「令和〇年頃から、相手方は『役に立たない』などの暴言を日常的に発するようになりました。」

失敗例② 夫婦不和の原因がわからない

実際の記載例
「性格の不一致により、離婚を希望します。」

何が問題か?
⇒なぜ不和になったのかが全くわからない

不和になった原因から始まり、その後離婚にいたるまでの経緯まで書くことが重要です。

改善例
「金銭感覚の違いが大きく、相手方は収入に見合わせない支出を繰り返し、
再三の話し合いにも応じませんでした。」

失敗例③ 申し立てのきっかけが書かれていない

失敗例②に対してさらに問題点を付け加えると、
⇒なぜ今調停なのかがわからない
⇒調停の必要性が伝わらない
といった点にあります。

話し合いがまとまらず、調停申し立てを決断した理由を書くようにします。

改善例
「令和〇年〇月、相手方との話し合いが決裂し、
今後の生活に不安を感じたため本件申し立てに至りました。」

失敗例④ 相手の主張を想定していない

調停の申し立てにより、こちらが主張するということは、
当然ながら相手もそれに対して何らかの主張(反論)をしてくることが考えられます。

反論への備えがないと、次の調停期日において
「反論が事実とズレている点」を改めて主張する必要が出てきます。

ただでさえ複雑な話し合いになりやすい調停で、
時間や労力を少しでも温存するために、
最初の時点で「相手が主張してきそうなこと」「こちらの事実」を調停委員に把握しておいてもらうこともポイントとなります。

改善例
「相手方は『生活費は渡していた』と主張する可能性がありますが、
実際には月〇万円程度であり、家計維持には不十分でした。」

失敗例⑤ 現在の状況と希望が不明確

調停を申し立てている現在の状況を調停委員に把握しておいてもらうことも大切です。
たとえば、

別居しているのか
子どもの状況はどうなっているのか
何を希望しているのか

上記3点は特に記載すべきポイントです。
現状+結論をセットで書きます。

改善例
「現在は別居しており、子どもは私と同居しています。
今後は私が親権者となることを希望しています。」

まとめ

事情説明書で重要なのは、次の5点です。

①不和の原因
②経緯
③申し立てのきっかけ
④相手の主張(反論)への備え
⑤現在の状況と希望


この5つが整理されていれば、完成度は大きく変わります。

離婚調停の申し立てによくあるケースを参考に、
例文を3つご紹介したいと思います。

【例文①】 価値観の不一致

私は令和〇年〇月に相手方と結婚し、子どもが1人おります。

結婚当初は大きな問題はありませんでしたが、次第に生活に関する価値観の違いが表面化しました。
特に金銭管理についての考え方に差があり、相手方は収入に見合わない支出を繰り返していました。
私は話し合いを重ねましたが改善されず、関係は悪化しました。

令和〇年〇月、状況の改善が見込めないと判断し別居に至りました。
現在、子どもは私と同居しています。

なお、相手方は生活費を渡していたと主張する可能性がありますが、
実際には十分な額ではありませんでした。

以上の理由から、婚姻関係の継続は困難と考え、本件申立てに至りました。

今後は私が親権者となることを希望し、養育費についても協議を求めます。

【例文②】 DV・モラハラ

私は令和〇年〇月に相手方と結婚しました。
それぞれ実家暮らしから、結婚と同時に二人で新居へ引っ越ししたのですが、
引っ越して間もなく、次第に相手方の暴言が増え、「役に立たない」などの発言が日常的に繰り返されるようになりました。
精神的苦痛が大きく、話し合いを試みましたが改善されませんでした。

そのため別居に至り、婚姻関係の継続は困難と判断しました。

相手方は「冗談だった」「本心ではない」などと発言を否定する可能性がありますが、
継続的に行われていたものです。

以上により、本件申立てに至りました。

【例文③】 不貞行為

私は令和〇年〇月に相手方と結婚しました。
しかし、相手方が第三者と不適切な関係にあることが判明しました。
関係修復を試みましたが、信頼関係は回復しませんでした。

未だ別居には至っておりませんが、これ以上の婚姻関係の継続は困難と判断しました。

相手方は関係を否定する可能性がありますが、LINEでの第三者とのやり取りの証拠もあり、
信頼関係は著しく損なわれています。

以上により、本件申立てに至りました。

最後に

ここまで、事情説明書の書き方と例文をご紹介しました。

ただし、これらの例文はあくまで一般的なケースをもとにしたものであり、
そのまま使用できるものではありません。

事情説明書は、これまでの経緯や現在の生活状況、
相手との関係性、争点となるポイントによって、書くべき内容が大きく変わります。

そのため、例文をもとに自己流で作成してしまうと、
自分に有利な事情を書ききれていない
不要な内容を書いてしまっている
相手の主張への備えができていない

といった状態になり、
不利な前提で調停が進んでしまう可能性があります。

とはいえ、
「いきなり弁護士に依頼するほどではない」
「まずは自分で進めたい」

と考える方も多いのではないでしょうか。

実際、離婚調停はご本人だけで進めることも可能です。
ただし、事情説明書の内容が整理されていないと、
調停そのものが噛み合わなくなることもあります。

そこで、
自分で作成したが、この内容で問題ないか不安
例文を参考にしたが、自分のケースに合っているか分からない
最低限、不利にならない形に整えたい

という方は、提出前に一度整理しておくことをおすすめします。

当所では、事情説明書の作成・添削サポートも行っています。

内容を確認し、個別事情に応じて実務ベースで整えたうえで提出できる状態までサポートします。

「全部任せるほどではないが、失敗は避けたい」
という方は、お気軽にご相談ください。