前回の記事で、
遺言は「争いをゼロにする魔法ではないけれど、争いを小さくする道具になる」
というお話をしました。
では、次に出てくる疑問があります。
「遺言って、何から始めればいいの?」
実は、多くの方がここで止まります。
「よし、遺言を書こう」と思っても、
いざ紙を前にすると手が止まる。
それもそのはずで、遺言は
文章を書く作業ではなく、考えを整理する作業
だからです。
今回は、遺言を書く前に整理しておきたいことを、順番にお話します。
遺言は、亡くなったあとに家族が最初に見る設計図になります。
設計図があいまいだとどうなるでしょうか?
結局、家族で話し合いが必要になります。
つまり、遺言の目的は
書くことではなく、実現されること。
まず最初に、ここを押さえておいていただきたいと思います。
1.相続人は誰になるのか

まず最初に確認していただきたいこと。
誰が相続人になるのか?
ここは、思い込みがとても多いところです。
相続人は、民法で決まっています。
・配偶者
・子ども
・子どもがいない場合は親
・親も子どももいない場合は兄弟姉妹
配偶者は常に相続人となり、
配偶者とともにまずは子どもが優先的に相続人として財産が配分されます。
上記の順番は、上から優先順位で並べています。
ここで大切なことがあります。
遺言がある場合、必ずしもこの順番どおりに分ける必要はありません。
遺言では、
相続人以外の人へ財産を渡すこともできますし、
特定の相続人に多く財産を渡すこともできます。
つまり、
民法の相続順位は「遺言がない場合のルール」です。
遺言は、そのルールを事前に調整するための仕組みとも言えます。
相続人の確認は、意外と複雑です。
「うちは配偶者と子どもだけだから大丈夫」
そう思われる方も多いのですが、
実務ではここが難しい場面もあります。
たとえば・・・
・前妻の子がいる
・養子縁組をしている
・認知している子が別にいる
・相続人の中にすでに亡くなっている人がいる
・長年、連絡を取っていない親族がいる
このような事情がある場合、
想定していなかった相続人が関係してくることもあります。
相続は、相続人全員が関係する手続きです。
誰が相続人になるかあいまいなままでは、
遺言の内容も実現しにくくなってしまいます。
だからこそ最初に一歩として、
相続人の整理から始めることがとても大切になります。
遺言は「財産を誰に渡すか」を決めるもの。
まずは、相続人の確認から始まります。
2.財産は何があるのか

次に必要なのが、財産の見える化です。
カンペキな一覧は必要ありません。
まずはざっくりで大丈夫です。
・自宅や土地
・預貯金
・保険
・株式
・車
・借入金
などなど・・・
ここがあいまいだと、遺言は途中で止まります。
「何を分けるのか」が見えて、初めて次に進めます。
3.誰に何を渡すか

ここが一番悩むところです。
そして、専門家と整理する価値が最も高い部分でもあります。
なぜならここは、
法律・家族関係・遺言を遺す方の気持ち すべてが重なる場所だからです。
たとえば・・・
・同居している子どもに家を残したい
・世話になった子どもには財産を多めに渡したい
・家族仲は良いけれど、平等にはしたくない
どれも、とても自然な気持ちです。
ただ、そのまま書くだけでは
誤解や不満の種になることがあります。
ここで大切になるのが、付言(ふげん)です。
付言とは、
「なぜこの分け方にしたのか」を伝えるメッセージ。
法律上の効力はありません。
それでも、実務ではとても大きな意味を持ちます。
・なぜ長男に家を渡すのか
・なぜ家族均等ではないのか
・家族への感謝
こういったメッセージを添えるだけで、
受け止め方が大きく変わったりもします。
だからこそ、この部分は
専門家と一緒に整理する価値が高いのです。
4.遺言執行者を決めるかどうか
あまり聞きなれない言葉かもしれません。
遺言執行者とは、
遺言を実現する人です。
銀行の手続きや不動産の名義変更、
各種相続の手続きを代理で行います。
この人がいるかどうかで、
手続きの進み方は大きく変わります。
実務では、とても重要なポイントです。
5.自筆か、公正証書か

遺言には、主に2つの方法があります。
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
「どちらが多いの?」というお声をよく耳にします。
正確に言うと、自筆遺言は届け出不要のため、総数の統計はありません。
ただ、法務局で自筆遺言を保管してくれる制度が2020年から始まって以降、
その手軽さからか、令和5年時点で約10万件が保管されているようです。
一方、公証役場の統計では、公正証書遺言の作成件数も年々増加傾向にあります。
つまり、
費用をかけてでも確実性を重視する方が増えている
という傾向も確かにあるようです。
公正証書によることで、
明確な内容で遺言が無効になりにくく、手続きも進めやすくなるというメリットがあります。
まとめ

遺言を書く前に決めることは大きく分けて5つ。
1.相続人
2.財産
3.分け方
4.遺言執行者
5.作成方法
この順番で整理すると、遺言はぐっと現実的になります。
ここまで読んで、
「書く前の整理が一番大変そう」
そう感じた方も多いかもしれません。
実際、遺言は
書く作業より整理する作業のほうが難しいです、
行政書士は、
相続関係の整理
財産目録の作成
遺言文案の作成
など、準備段階からサポートできます
「まだ作るか決めていない」
どんな段階でも、まったく問題ありません。
遺言は、考え始めた時が相談のタイミングです。
和歌山県で遺言についてお考えの方は、
お気軽にご相談ください。
